三国志挫折経験者への手引き

僕の周辺に三国志を読んでる人、まぁ~~~~~~~~……いない。
僕自身は三国志だいすきマン。しかしまぁとんと周りに話の出来る人間がいない。

中学生までは同級生に二人いた。高校で進路は別々になったが、三国志ほどのビッグタイトルなのだから簡単に愛好者は見つかるだろうと踏んでいたが、それから15年弱、いない。
出会わない、探したけどいない、どこにもいない。
ネットの世界を見ると掃いて捨てるほどいて、わけわからんくらい詳しい人間が
いくらでもいるというのに、現実にはいないのである。


ただ、辛うじて「ちょっと読んだことはあるけど、よく分んなくて序盤で読むのやめた」という人間はけっこう見てきた。
本人たちにそういう自覚はないだろうけれども、語弊を恐れず言ってしまえば三国志を挫折した人たちである。
悔しい…その「よく分からなさ」…!悔しい…!それさえなければ同好の士になれたものを……。結局そのよく分からないがために興味が途切れてしまってはいさよならである。

もし、一度読むのをやめてしまい、それでもまだ読みたいという人間がいるなら、参考になる手引きを示したい。そういうつもりのやつを書きます。

そもそも三国志ってなんだ?

昔の中国でなんか三つの国が争ってる時代の物語という認識があって三国志を読み始めた人も多いかと思う。というかタイトル自体に三国ってついてるからね。概ね間違ってないけど、もうちょっとだけ情報の解像度を上げてみよう。

三国志というのは紀元2世紀の終わりごろから3世紀の終わりごろまでの、ちょうど100年間くらいの時代で中国の中でなにが起きてたかの物語。
漢王朝が滅びるか滅びないかくらいかのタイミングで始まって、晋王朝が覇権を握るまでの期間のおはなし。日本では卑弥呼がいて、みんなでお米作ってたくらいの時。
この時代は政情不安定なんてレベルではないくらい世間が混乱してて、平たく言ってこの世の地獄。俺が赤ん坊ならリセマラしてるレベル。
政治中枢の権力争い、政治腐敗、モラルの失墜、飢饉、疫病、重税……と人間社会の苦しさの役満みたいな状態。
そんな訳分らん時代だからこそ、地方の有力者が勢力として独立し、互いに淘汰されていき、さながら戦国時代の様相を呈していく。そういう争いの中で色々な人物の人間模様が描かれていくのを見るのがこの作品の醍醐味だったりする。

などと書いたものの、〇世紀だとか〇年間だとか政情不安定だとか……歴史の教科書みたいなこと言ってんじゃねぇよ!と感じた方もいるのではないかと。割と僕もこういう説明されるの苦手です。じゃあせっかく上げた解像度をまたあえて下げて述べると三国志はなんなのか

ハチャメチャに好青年の主人公が国を建てて、そして滅びるまでの物語

これです。

そう、主人公がいて、その主人公を軸にエピソードが回り、結末を迎える。
なぜなら三国志は、「小説」。「小説作品」なんです。

三国志にはいろいろなエディションがあるんだけど、日本で単に「三国志」と呼ぶ場合は「三国志演義」というエディションのものであることがほとんど。
三国志演義は実際のこの時代の歴史書を元に、三国時代のよっぽど後の時代になって書かれた小説なんですな。
ただ、綿密な時代考証がされていて、概ね歴史上の事実の通りにメインストーリーは進行するけど、一部よりドラマチックになるように脚色されてる箇所がいくつかあるよくらいなもの。つまり事実を基にしたフィクション、『恋空』みたいなもんです。いやどうだろそれは分からん。

とにかく、三国志≒三国志演義はきちんと主人公がいて、登場人物の感情が動き、ストーリーが進行する物語。みなさん大好きなドラゴンボールやるろうに剣心、ゼルダの伝説なんかと何も変わらない。というかまんま大河ドラマと同じ構成っすね。
初代主人公が建てた国を二代目主人公が引き継ぎ、奮闘虚しく滅びゆく様はさながら人造人間に敗れた世界線の悟飯のおもむきがある。

よくある三国志つまづきポイント

僕が中学生のころから布教活動をするなかで見聞きした中だと、いくつか典型的なつまづきポイントがあるように思える。
【三大つまづきポイント】

・名前が分からない

・なにをしてるか分からない

・誰が魏呉蜀のチームか分からない

これです。

可能な限りつまずきの解消を図りつつ、一つずつ順番に見てみよう。

名前が分からない

これね、ほんと~~~~~~~~~~~によく聞く。10人に聞いたら12人がそう答えるくらいにはよく聞く。三大つまづきポイントと銘打ったものの、これはマジで別格の殿堂入り。
しかしまぁ確かに実際そう。中国人の名前なんて馴染みがないしなおさらかもしれない。
そもそも、世界史の横文字の名前にしても、日本史の古風な名前にしても、馴染みなく覚えられないというのもよく聞く話ではある。馴染みないものがこれでもかと沢山出てくれば覚えられなくても当然かもしれない。
この現象への解法は識者によって様々あろうかとは思うんだけども、僕が提唱する解法はこいつだけ覚えとけメソッド、超重要な数人だけ覚えてあとは自然に覚えられる以外の人間は皇族だろうが将軍だろうが全員等しく村人Aくらいの存在だと割り切って読み進めること。以下に三国志序盤の、こいつだけ覚えとけば大丈夫な7人を挙げます。

・劉備:
三国志の主人公だと思ってくれてとりあえず大丈夫。
ハチャメチャにいいやつ。
耳たぶと腕がクソ長い。皇帝と遠い親戚。
田舎者な上に貧乏。

・関羽:
劉備のマブその1。マブ過ぎて義兄弟になった。
義兄弟というのはズッ友と同義語。
髭が立派で高潔な武人だけど、だいぶ堅物。
わりと田舎者な方。

・張飛:
劉備のマブその2。マブ過ぎて義兄弟になった。
酒が大好きなやべー奴。乱暴者だけど憎めない。
腕っぷし担当で、やたら強い。
田舎者だけど小金持ち。

※劉備、関羽、張飛の三兄弟が主人公一行で、この三人は知らないと話にならない。アニメ版ポケモン序盤のサトシ、カスミ、タケシみたいなもん。

・張角:
敵。最序盤のボスキャラ。カービィでいうウィスピーウッズ。
魔法使いみたいな不思議な力を持っている。
武装団体の頭目で、国を挙げてこいつを倒そうとしてる。

・董卓:
敵。ひたすら悪いやつ。張角の次のボスキャラ。
恐怖政治を敷いて、みんなからメチャクチャ嫌われてるけど
おいそれと倒せない。こいつを倒すために討伐軍が組織される。

・呂布:
敵。三国志で一番強い武人(諸説あり)。だが性格も頭も悪い。
裏切りの天才で、信用ならない。
董卓の義理の息子。董卓編の中ボス。武力特化型。

(※序盤は主にこの張角、董卓、呂布を倒そうとしてみんな頑張ってる。劉備達はその活動のお手伝いをしてたりしてなかったりする)

・曹操:
敵…?序盤では比較的劉備達の味方。大物役人の一族。
後に劉備最大のライバルになる強キャラ。三国志のラスボス。
無名な田舎者の劉備と違って、若い時から都会で活躍してた。

※曹操は超大物なので、三国志中盤以降の物語全体を動かしていると考えて過言ではない。覚えていると後々の話が分かりやすい。

以上、メチャクチャ大事な7人でした。大切なキャラは他にも沢山いるんだけど、人名覚えるの苦手な人はあらすじを理解するまでの序盤はこの7人だけ覚えておけば大丈夫、たぶん。

何をしているか分からない

ストーリーが追えてないパターンなわけやけども、これって先に挙げた人物名が分からない現象の弊害やと思うんよね。キャラが分からないから、会話の内容が分からず状況が分からない、状況が分からないから大筋の目的が分からない、目的が分からないからキャラが何をしてるか分からない。分からん尽くしだとキャラの特徴が掴めないからさらにキャラが覚えづらいという負のスパイラル。したがって、先述のキャラ7人を中心にしてストーリーを読んでいけば理解できるかなぁとは思う。

それでもよく分からない人向けに劉備視点を軸にして三国志全体の流れを書いてみます。
大筋の中で大体どの辺のエピソードなのかなというのが見えてくればあらすじ理解の助けになるかと…!

・黄巾の乱編:
世の中の乱れっぷりに張角がおこ。武装蜂起する。
劉備は一旗揚げるため故郷を発つ

・董卓編:
董卓が皇帝保護の名目で政治を私物化。好き放題する。
劉備は董卓討伐軍の一員として参加する。

・官渡の戦い編:
勝者の曹操が中国のほぼ北半分を手中に収めた大戦。
三国志の趨勢を決めた戦だが、サイヤ人襲来編くらいの
扱いをされてる気がする(偏見)
劉備はあっちこっちフラフラしてて迷走の極み。

・三顧の礼編:
劉備諸葛亮を仲間にする。
諸葛亮とはみんな大好き「孔明」のこと。
三国志の二代目主人公ここで登場。

・赤壁の戦い編:
官渡の戦いで勝確になりちょヅいた曹操
中国南部に攻めてきた。
劉備孫権のタッグでボコボコに返り討ちにした。
諸葛亮がこれでもかと大活躍する、「三国志」を
象徴する名エピソード。いわばフリーザ編。

・三国争覇編:
あちこちフラフラしてた劉備、ついに本拠地をゲット。
劉備の蜀、曹操の魏、孫権の呉、が並び立つ。
ここにきてようやく三国志のタイトルを回収
するんだけど、ここ辺りがピークなんよね……

・樊城の戦い編:
タッグであるはずの劉備孫権
なぜか喧嘩を始める。
逆に孫権曹操とタッグを組む。
関羽が乙る。わけがわからん。

・夷陵の戦い編:
関羽の死で劉備がわけわからんくらいキレる。
再度孫権に喧嘩をふっかけるがボコボコにされる。
劉備ガチへこみして乙る、後事を諸葛亮に任せた。
いっぽう張飛は戦いの直前、部下に暗殺されていた。
理由はパワハラがひどすぎたため(ガチ)。
ここで初代主人公一行が全員死んだことになる。

・南蛮平定編:
孫権とは仲直りした。
諸葛亮、蜀の南方の異民族(南蛮)の鎮圧に動く。
硬派でおふざけを許さない世界観の三国志演義だが、
唯一ふざける。さながらグレートサイヤマン編。
あまりに重たすぎるストーリー展開に突如現れた箸休め。
トラップがはびこる未開のジャングルで異民族の大王
たちを相手に諸葛亮が最新兵器で無双する。おもろい。

・北伐編:
諸葛亮、魏の国を何度も攻める戦を始める。
しかし魏は強く力及ばず、志半ばに陣没する。
この後もうちょい続くけど諸葛亮の死が事実上の最終回。

以上、三国志全体のおおまかな流れです。実際はもっとたくさん中小規模の戦なんかが頻繁にあってて、その都度都度、人物ごとにエピソードがあり、面白い。

誰が魏呉蜀のチームか分からない

これは事前にちょこっとだけ知識があるパターン……というよりは三国志というタイトルに印象が大きく引っ張られてるパターンかも。

「この劉備とかいうやつは魏呉蜀どれ?」

「この張角っちゅーやつは魏?」

「袁紹って曹操と喧嘩してるからやっぱ蜀?」

三国志、三つの国が争ってるっていうから当然そう思うよね

そう、三国志が三つの国に分かれるのは中盤もそこそこ過ぎた辺りから……
前述の三国志のあらすじをご覧の通り、半分を折り返してちょい過ぎたところ。

プロスポーツチームみたいな分かりやすい勢力分けかと思ってた人は序盤の群雄割拠ぶりに面食らうかもしれない。おもってたんとちがうという飲み下しづらさから、世界観に没頭できない人もままいると思う。

そういうもんだというつもりで読んでいけばOKです。
あくまで劉備が主人公の物語、劉備視点でストーリーを読み進めれば誰が味方で誰が敵なのか分かりやすいかと。勢力なんかは割と頻繁に入れ替わるんで、こだわって覚えるよりはそういうのがあるのねって感じで深く考えないが吉。

初めから国が定まってないので、劉備が蜀を建国するまでのがんばりはなかなか盛り上がり、良い。

終わりに

以上、三国志三大つまづきポイントに寄り添いながら、三国志挫折経験者への手引きを示してみました。かなりざっくりだから正確さはそこまでなんだけど、ちょっとでも三国志コンテンツへの助けになればこれ幸い。
なかなか他の初心者向け解説サイトなんかを見ていると、専門用語を割とふんだんに使ってるような印象があり、歴史系コンテンツにまったく縁がなかった人はそういう言葉の時点で引いちゃうんじゃないかなぁとか思ってたので、なるべく用語を使わずまとめてみた。

他にも知ってれば理解の助けになる前提知識とかあったりするから、別記事で補足出来たらいいなぁ、などと思っております。

おわり

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